残念ながら会社員のあなただってMC(マインドコントロール)されている! 本当の統一教会問題は、統一教会だけの問題ではない【仲正昌樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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残念ながら会社員のあなただってMC(マインドコントロール)されている! 本当の統一教会問題は、統一教会だけの問題ではない【仲正昌樹】

統一教会問題を、自分たちと関係のない話に矮小化しようとする人たち

 

◾️統一教会問題を、自分たちと関係のない話に矮小化する人たちの陥穽

 

 しかし、その後の人生で、それほど極端でないにしても、重い雰囲気の中でメンバーに無理なミッションを自発的に引き受けることを強いる教授会、思想系雑誌、運動団体、アーティスト集団、企業、他宗教団体等を見てきた。それらは、リーダーの気持ちに応えさせるプレッシャーをかけ続けないと、すぐに崩壊してしまいそうに見える。プレッシャーをかけるのをやめたら、その方が案外うまくいくかもしれないが、そうなるという保証はないので、団体に愛着がある人たちはそっちへ踏み切れない。

 統一教会の圧力は強すぎるので許されないのだとしても、その限界はどういう風に設定したらいいのか。個別の場面では、統一教会以上のプレッシャーをかけている団体はいくらでもあるだろう。安易な線引きをすれば、大きな社会的摩擦を生む。統一教会の何がやりすぎなのか具体的に検討すべきだ。

 そういう次第だから私は、教団内で実際にどのような感情-信仰心のコントロールが行われているかをきちんと知ろうとせず、特別なMCの技術があるかのように宣伝したり、「地獄に行くぞと脅される」という雑な言い方で、統一教会問題を、自分たちと関係のない話に矮小化しようとする連中を一貫して批判している。

 統一教会が実際にどうやって信者にプレッシャーをかけているのかつぶさに知ったうえで、やはり自分たちと関係のない下等な連中の問題だと思えるとしたら、自分の現実から目を背けているか、組織で働いたことがないかのいずれかだ。リアルな統一教会は、多くて信者数五万人程度の弱小教団だが、「統一教会」的な力学が働く場は日本の至るところにある。

 

文:仲正昌樹

 

KEYWORDS:

✳︎重版御礼✳︎

哲学者・仲正昌樹著

『人はなぜ「自由」から逃走するのか』(KKベストセラーズ)

 

「右と左が合流した世論が生み出され、それ以外の意見を非人間的なものとして排除しよ うとする風潮が生まれ、異論が言えなくなることこそが、
全体主義の前兆だ、と思う」(同書「はじめに」より)
ナチス ヒットラー 全体主義

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仲正 昌樹

なかまさ まさき

1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し、自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている。最近の主な著書に、『現代哲学の最前線』『悪と全体主義——ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書)、『ヘーゲルを超えるヘーゲル』『ハイデガー哲学入門——『存在と時間』を読む』(講談社現代新書)、『現代思想の名著30』(ちくま新書)、『マルクス入門講義』『ドゥルーズ+ガタリ〈アンチ・オイディプス〉入門講義』『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』(作品社)、『思想家ドラッカーを読む——リベラルと保守のあいだで』(NTT出版)ほか多数。

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